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ドクターからのメッセージ 高血圧治療のポイント 先生が高血圧治療のポイントを、Q&A形式で分かりやすくお話します。 みなさまの日々の健康維持にお役立て下さい。実際にどのような治療を行うのか、日常生活では何に気をつければよいかなど、みなさまの疑問にお答えします。

※ 掲載情報は取材当時の内容となりますので予めご了承ください。

ドクターのご紹介

近畿 兵庫県 姫路市

心不全に気づかず、放置したままの「隠れ心不全」の人が増えています。
高血圧をきちんと治療することで、あなたの心臓を守りましょう。

兵庫県立 姫路循環器病センター
副院長・循環器内科部長
川合 宏哉先生

ドクターからのメッセージ

Q1.高血圧が引き起こす合併症の危険性、特に心臓への影響について教えてください。

血圧が高い状態が長く続くと、血管は次第に厚く硬くなり、血管の内側が狭くなって血液が流れにくくなります。これが、高血圧による“動脈硬化”です。動脈硬化は全身の血管で起こり、脳梗塞、心筋梗塞、腎不全、網膜症、閉塞性動脈硬化症などの原因となります。つまり、生活の質(QOL)を低下させ、元気に長生きするのを阻む障害となるのです。動脈硬化による血管障害として、よく知られているのが心血管の病気です。心臓に血液を送っている冠動脈に動脈硬化が起こると、血管が狭くなったり詰まったりして、心臓が酸素不足に陥り、狭心症や心筋梗塞を発症します。さらに、これらの病気によって心機能が低下すると、心臓が十分に収縮できなくなり、心不全を起こすこともあります。心不全とは、心臓の働きが低下した状態のことで、あらゆる心臓病が最終的にたどり着く病態です。
心不全には、心筋梗塞などの血管障害を介さずに起こってくるものもあります。高血圧があると、高い血圧に逆らって血液を送り出さなくてはならないため、心臓自体にも大きな負担がかかり、心臓の筋肉が肥大化してきます。心肥大を起こした心臓は、硬く、拡がりにくくなり、血液をうまく取り込むことができなくなって、息切れや呼吸困難などの症状を呈するようになります。これまで、心不全といえば、心臓が弱って収縮力が低下する「収縮不全」が主とされてきましたが、最近、心肥大によって心臓がうまく拡がらない「拡張不全」も多いことが分かってきました。拡張不全は高齢者に多く、高血圧、糖尿病、慢性腎臓病(CKD)などの基礎疾患のある人に起こりやすいという特徴があります。病態は未だ十分には解明されていませんが、最大の増悪因子は高血圧といわれていることから、高齢者や基礎疾患のある“心不全予備群”の人は、高血圧をしっかり治療することが重要です。
心不全の代表的な症状として、息切れ、動悸、呼吸困難、疲れやすさ、むくみなどがあります。しかし、ご高齢の患者さんでは、症状があっても「歳のせい」と思い込み、受診しないケースも少なくありません。このように、自分が心不全であることに気づかず、放置したままの“隠れ心不全”の人も増えており、大きな問題となっています。危険サインに早く気づき、軽症のうちに治療を始めれば、心不全の悪化を防ぐことができます。1年前と比べ、息切れや動悸がひどくなったと感じたら、迷わず受診して検査を受けましょう。また、血圧が高い人は、心臓の負担を軽くするため、早めの治療を心がけてください。
心臓病の“終末像”である心不全についてお話ししてきましたが、腎臓病が悪化して腎不全になれば、腎移植や人工透析が必要になります。また、網膜症が進めば失明する危険もあります。つまり、どの合併症であれ、QOLを大きく損なう結末が待っていることは間違いありません。高血圧治療の目的は、単に血圧値を下げることではなく、さまざまな臓器障害を防いで、元気で長生きすることです。それぞれの合併症がたどる終末像から目を逸らさず、目的意識をしっかり持って、治療に取り組んでいただきたいと思います。

Q2.薬物治療を続けていくうえで、どのようなことに気をつけなければいけませんか。

しかし、せっかく治療を始めても、途中で通院をやめたり、薬を飲まなくなってしまう患者さんが多いのも事実です。なぜなら、高血圧は無症状であるのに対し、血圧を下げると、めまいやふらつきなどの不快な症状が現れることがあるからです。「血圧が高いほうが元気だった」とおっしゃる方もおられますが、それは身体が高血圧に慣れてしまっている証拠で、そのまま放置しておけば、怖い合併症につながります。心筋梗塞や脳梗塞を起こしてから慌てて薬を飲み始めても、QOLは元には戻りません。血圧が高い期間が長ければ長いほど、血管は硬くなり、血圧を下げる際の身体への負担も大きくなります。したがって、できるだけ早期に、血管が柔らかいうちから治療を始めることが大切なのです。
降圧薬にはさまざまな種類があり、高血圧の程度や合併症の有無に応じて、患者さんに合った薬を処方していきます。ここで重要なのは、血圧は「ただ下がればよい」というものではないということです。重度の高血圧の場合、最初から大きく血圧を下げると、先述の理由で、ふらつきなどの症状が起こります。そこで、徐々に薬を増やしながら、ゆっくり下げていくのですが、薬が増えることに抵抗を感じる方も少なくありません。そうした患者さんには、「高血圧に慣れた身体をゆっくり正常血圧に戻すため、徐々に薬を増やしていきますね」と最初によく説明することで、ご理解いただくよう努めています。
もう一つ、ふらつきの原因としてご注意いただきたいのが、夏場の血圧の下がり過ぎです。血圧は冬より夏の方が低くなるため、同じ薬で治療していると、夏に血圧が下がり過ぎ、ふらつきや頭部浮遊感などの症状が現れることがあります。また、夏風邪で食事が摂れず、血圧が急激に下がってしまったり、利尿薬を服用している患者さんが脱水を起こすこともあります。こうしたトラブルを防ぐには、血圧の変化にいち早く気づき、薬の減量や変更といった対処をしてもらうことが大切です。とくに、ここ数年、日本では“熱帯化”といわれるほど夏の気温が高く、血圧コントロールはいっそう難しくなっています。家庭でも血圧を測定し、ふだんより低ければ、早めに主治医の先生に相談してください。

Q3.地域の高血圧患者さんにメッセージをお願いします。

高血圧の薬は一生飲み続けることが基本です。1回くらい飲み忘れることもあると思いますが、合併症を起こさないためには、その1回、1回の積み重ねが大切です。薬の効果は必ず自分に返ってきます。私たちも、1日1回服用の長時間作用型の薬や、複数の薬の成分を1剤に配合した合剤を用いるなど、回数や錠数を減らす工夫を講じながら、患者さんの毎日の服用をサポートしていきたいと思っています。
高血圧の治療では、食事や運動といった生活習慣の改善、さらに、高血圧の原因となっているストレスを取り除くことも大切です。生活習慣では、減塩に努めるのはもちろん、アルコールやタバコは心臓にも悪影響を及ぼしますので、節酒・禁煙を心がけてください。
ここ姫路では、開業医の先生方と私たち中核病院の医師が連携し、重症の患者さんや合併症のある患者さんをスムーズに紹介できる病診連携システムも整っています。市民向けの公開講座や勉強会もたくさんありますので、お近くで開催される際は、ぜひご参加ください。高血圧の早期発見・治療を通し、地域の患者さんの心臓を守っていきたいと思います。

病院名および診療科 兵庫県立 姫路循環器病センター
住所 兵庫県姫路市西庄甲520
電話番号 079-293-3131(代)
医師名 川合 宏哉先生
ホームページ http://www.hbhc.jp/外部リンク

※ 掲載情報は取材当時の内容となりますので予めご了承ください。