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みんなではじめよう!【知識編】 精神疾患を検査でみる試み

病気の診断と治療のよりどころ バイオマーカー

バイオマーカー(生物学的指標)は聞きなれない言葉かもしれません。しかし、われわれの身の回りにもあるものです。例えば、一家に一つはある体温計。これが例えば39.5℃という値であれば、何か体に異常が起こっていることを知らせてくれます。学校や仕事を休むことの目安になるかもしれません。こうした体の健康に関わる「目に見えるものさし」をバイオマーカーと呼びます。

もう少し専門的なところでは、血圧や血糖値もバイオマーカーです。これらは、それ自体が治療者と当事者の双方にとって、病気の診断と治療のよりどころとなることができるのです。

精神疾患を客観的な指標で観る

それでは、こころの健康に関わる「目に見えるものさし」は、あるでしょうか?実際にはこれまで精神疾患の診断と治療のよりどころとなる客観的なバイオマーカーはありませんでした。それを克服するために、血液中の物質についてのさまざまな値やMRI(磁気共鳴撮像法)、PET(ポジトロン断層法)などの脳画像といった、脳の動きに関連するこころの健康のためのバイオマーカーが研究されていますが、まだ実用化されていません。

もしこうして、こころの健康を「目に見えるものさし」で把握できれば、精神疾患の診断や治療、さらには予防のための指標として役立つことになります。

先進医療「光トポグラフィー検査によるうつ症状の鑑別診断補助」

先進医療「光トポグラフィー検査によるうつ症状の鑑別診断補助」

2009年4月に、厚生労働省から光トポグラフィー検査が精神医学領域で初めて先進医療に承認を受けました。先進医療は保険診療とは異なり、その限定的な効果を理解した希望者が指定施設でのみ自己負担で受けられる医療です。まだ研究段階ですが、精神疾患の診断と治療に役立つ検査として実用化への道を一歩踏み出しました。これはうつ症状を呈している当事者の脳の働きを調べて、大うつ病性障害(うつ病)、双極性障害(躁うつ病)、統合失調症のいずれかの典型的な波形パターンに似ているかを判別する技術です。近赤外光を用いて脳血液量の変化を検討する技術で、簡便(約15分)・安全で、比較的安価なため普及が期待されています。これを客観的なバイオマーカーとして用い、問診による臨床診断や心理検査などと組み合わせることで、診断の精度を高め、治療方針の決定に寄与することが目指されています。

この光トポグラフィー検査の先進医療の承認をひとつの足掛かりとして、現在研究段階のさまざまなバイオマーカー技術が、今後も臨床の現場で実用化されていくことでしょう。このように精神疾患も検査でみる試みが行われているのです。